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February 08, 2005

物語 バルト三国の歴史

タイトルの本(中公新書)を読み終えた。

この本は現在EUの新規加盟国として注目されているバルト三国の歴史を一通り読み易く紹介している。この手の新書での歴史本では「クセジュ文庫」がよくあるが、このシリーズはフランス語を訳したものらしく、どうも読んでいて面白くない。その点この中公新書は「物語」というだけあって親切である。

特に最も興味深かったのは、常に三つ子のようにまとめて考えられている三国の歴史は「エストニア・ラトビア」と「リトアニア」では大きく異なっていることだ。前者二国は第一次大戦前には国家としてまとまった歴史が無く、ドイツ騎士団の流れを汲むドイツ人の影響を受け商工業もある程度発達していた。一方リトアニアは中世に大国として台頭し、ポーランドと常に密接な協調・対立関係にあり、産業としては農業中心の地域だった。また民族的には「ラトヴィア・リトアニア」はバルト系だが、「エストニア」はフィンランドに近いアジア系の流れを持つ。決して三国は「三つ子」ではなく、「三国」としてまとめて考られるのはつい最近になってからだということだ。

エストニア、ラトヴィアの地域は政治的には中世以降スウェーデン、デンマーク、そしてロシアの勢力下にあり、そこでは入植したドイツ人(バルト・ドイツ人)が貴族として大農場を経営し、政治的にも大きな力を持っていた。しかしこのドイツ人もロシア革命や第二次大戦時の混乱の中で多くは出国、亡命あるいは財産没収、流刑などの過酷な運命を余儀なくされた。国が生まれたり、国境線が引き直されたりというのは2つの大戦があった20世紀に最も頻繁に起こったが、その都度どこでも今で言う「民族浄化」のようなことが起きていたはずである。例えば「東プロイセン」という第二次大戦前のドイツの領土は、今はポーランド、ロシア、リトアニアに引き継がれ、そこに百万人単位で住んでいたドイツ人は今はもう跡形もない。偶々大国の思惑や戦争による「引き直し」の時期に居合わせてしまった犠牲者の苦労は計り知れないものがあったろう。身近な所では「北方領土」を追われた日本人もそうか。大きな勢力の中で翻弄され続けた人々の犠牲を十分に改めて感じさせられた一冊だった。

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