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February 18, 2005

ケネディはなぜ暗殺されたか

タイトルの本(NHKブックス)を読み終えた。

ケネディ大統領の暗殺は、20世紀の謎の一つとして真相は未だに闇の中にある。この事件はオラニエ公が生まれる前の話で、印象に残っているのはオリバー・ストーン監督の映画「JFK」のケビン・コスナー演じる検事の熱演と、フィルムに撮られた生々しいケネディ大統領の撃たれたシーンである。この本はそんなおぼろげな印象を事実に基づいた具体像で置き換えてくれた。

まず理解できたのは、ケネディ大統領は暗殺されるべくして暗殺されたことである。当時のアメリカ社会の中でケネディ政権の支持率は高かったが、その一方で過激な分子を中心に不満は最高点に達していた。とりわけ次のグループはケネディを「裏切り者」として邪魔に思っていた。彼等は特に手ごわい連中ばかりで、これらが束になって掛かって来てはアメリカ大統領と言えども命は保障されなかった。
(1) 亡命キューバ人グループ (大統領の反カストロの政策の生温さに反対)
(2) 全米のマフィア組織 (ロバート・ケネディ司法長官のマフィア撲滅作戦に激怒)
(3) CIA、FBIの一部保守派 (反カストロ活動、ベトナム積極介入等を強引に進めたいが大統領の反対に遭う)
更にはこれにダラス市警察、大統領シークレットサービスの一部(?)などが加わった陰謀によって、ケネディは1963年11月22日にダラスで銃弾に斃れた。もしそこで失敗しても、近いうちにまた狙われていたことも確かである。とにかく厄介な敵が多すぎたのだ。

またアメリカ人の理想ともされているケネディが、実はそれ程身の回りはきれいな人間ではなかったということには驚いた。彼の父はマフィアめいた事をしていたし、彼自身選挙の際にイリノイ州でのマフィアによる不正がなければニクソンに敗れていたと言われる。またジャクリーヌ夫人との絵に書いたような円満な家庭はうわべだけで、実際には浮気もほとんど公然と行なわれ(マリリン・モンローも)、しかもマフィアに繋がるような女性とも付き合っていた。そうした中で理想に燃えた弟ロバートが、反麻薬・反マフィアの取締りを厳しくしたものだからその手の筋からの反発は大きかった。上記の不平不満グループの中では、マフィアが最も直接的に手を下したであろうことが推測される。

とても不思議だったのは、最高権力者の暗殺という大事件にも関わらず、その原因については全てが真実から遠ざけるように力が働いていたことである。調査委員会の「ウォーレン委員会」は政界や司法界の蒼蒼たる面々で構成されたにもかかわらず、「史上最大の身代わり」といわれたオズワルドの単独犯行、という当局に最も都合の良い結論につながらないものは全て無視した。しかもその無視した理由は理不尽なものばかり。大統領暗殺の真相究明よりも、各利益団体やマフィアの地位や利権、金儲けが第一義に考えられた。しかもそのインチキに最も熱心だったのがFBIとCIAであり、特にFBIの息の掛かったフォード委員(後の大統領)がその先兵だったというのは驚くしかない。

また暗殺犯とされたオズワルドにはFBIのエージェントだったらしい経歴があり、彼を銃殺したジャック・ルービーもFBIやマフィアとの繋がりが見え隠れする。更にはCIAが一枚も二枚も咬んでいるようだ。彼らは自分の意志に関わらず、周りから「役者」としてアサインされてしまったのであろう。治安を守ることを主な任務としている組織(FBI、CIA)は何故かその逆の方向に強力に向いてしまった。

「利益を共にする過激な組織の複合体による謀殺」というものが民主国家でほぼ完全犯罪のように成し遂げられ、真相究明も闇の中に葬られるべくして消える。こういうことが現代でも起こりうることの驚きと恐れを十分に感じさせる一冊だった。

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