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February 24, 2005

レーニンをミイラにした男

タイトルの本(文春文庫)を読み終えた。

こ存知の方も多いように、レーニンの遺体は火葬にも土葬にもされることなく、今もまだモスクワの赤の広場にあるレーニン廟に安置されている。特殊な防腐処理によって生前の顔かたち・色が保たれている稀有な例だ。この本の作者はその保存に関わってきた化学者によるものである。

どうすれば腐らずに保存できるかと言うと、体内では大動脈にグリセリン、ホルマリンといった液を流し込み、体全体をアルコール、ホルマリン等の物質による「バルサム液」というものに浸して乾燥を防ぐ。シワやシミは酢酸と水を混合させて漂白させる(?)などという具合だ。このようなことが可能であると言うことがまず驚きであった。

更にこの処理自体は「政治色」が非常に強く、レーニンの後は社会主義国の独裁者(ブルガリア首相ディミトロフ、モンゴル大統領チョイバルサン、ホー・チミン他)を中心に個人崇拝の対象となるような人にばかり施された。ところが時代が変わって今でも保存・公開されているのはレーニンだけのようだ。やはり生前の姿のままに保存すると言うのは、代の東西を問わず誰にとっても不自然なのであろう。この科学技術も20世紀の遺物になるのか。

またこれを進めていた「レーニン廟付属研究所」はソ連崩壊で資金が厳しくなると、ロシアン・マフィアを主な顧客にした死体保存ビジネスを展開したと言うのも笑える。マフィアは暗殺される事が多く、葬儀の時まででも銃痕をきれいに直したりするのにそれまでのノウハウが非常に役立ったようだ。金払いも良かったのだろう。

政治と言えばスターリンの恐怖政治は、彼等にも例外なく影響を与えた。ユダヤ人ということでその父親が逮捕され自らも職を失ったり、旧知の共産党幹部(ルイコフ、ブハーリン)の粛清裁判を見届けたり、筆者はとにかく大変な時代を生き抜いたのだった。こういう人の書物にはいつもその重みが感じられる。

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