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October 18, 2006

オリガ・モリソヴナの反語法

このタイトルの本は以前にも紹介した米原万里さんのエッセイ「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」の姉妹版に当たる小説である。同じ1960年代のプラハ・ソヴィエト学校が舞台になり、そこに実際に在学した友達のその後と再開を描いたのが「・・・真実」、そこの有名ダンス教師(架空)オリガ・モリソヴナのそれまでの過酷な人生を解き明かして行くのが「・・・反語法」という位置付けになる。

まずこの「反語法」って何だっけ?という疑問が湧いた。@nifty辞書によれば『修辞法の一。反対の内容を述べることによって、逆に自分の考えを相手に強く認識させる表現法。』とある。要は逆のことを言って誇張する訳だ。このオリガが多用し、その重要性は本書の最後にようやく納得が行く。内容を考えると「オリガ・モリソヴナの半生 –ソ連という時代に生きて」といったタイトルの方が、一般読者には構えられずに分かり易いのではないか。

「Bunkamura ドゥマゴ文学賞」という賞に輝いた小説だが、これはノンフィクションに限りなく近い。確かに幾つかの偶然が重なれば、この時代(1930~50年代のソ連)にこうしたことがあり得たであろうなあと思われる展開が重なり合いながら続く。ミステリー小説のような謎解きと正確な歴史背景や事件の描写が相まって、どんどんと惹きつけられる。ただこの体制と時代に翻弄された女性たちの人生の物語は、やはりある程度歴史的な事実を知っている読者の方が感じるところが大きいだろう。

チェコの外交官が大きな役割を演じることになるのだが、この小説ではKGBの手から上手く逃れている。この前読んだ「KGB」という本では、この国のある外交官は盗聴によって抹殺された。全体のこのあたり(監獄や収容所)の描写は、「雪解け」の時代という理由を付けてソフトになっているような気がする。それにしてもこのオリガの生き様には芯が通っている。こうした強靭な精神が無ければとても生き抜けなかっただろうと、架空の人物なのに実在したかのように思ってしまった。

文庫本にもなっているとも知らずに単行本を注文して買ってしまったが、それだけの価値ある一冊だった。

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