April 06, 2007

イースターのマタイ受難曲

今年もまた春の訪れを告げるイースターの季節がやってきた。イースターの音楽といえば「マタイ受難曲」。ここに来てから毎年聞きに行っているので、最も多く生演奏を聞いた曲である。今年はコンセルトヘボウ管弦楽団の演奏をチケットを購入するも、オラニエ公は手違いで実際には行くことができなかった(夫人のみ鑑賞)。そこでどこかでリターン・マッチをということでウェブサイトを探した結果、お隣の国ドイツはエッセンのフィルハーモニー・ホールまで足を伸ばすことにした。

エッセンといえば昨年の12月に「トリスタンとイゾルデ」を日帰りで見に行ったことがある。片道約2時間のドライブだが、マタイ受難曲をネイティブのドイツ語で聞けると思えば苦にはならない。オラニエ夫人には翌日のデュッセルドルフでのお買い物というオプショナルツアー付きだ。

エッセンはかつて鉄鋼業で栄えた街で、会場のホールも鉄鋼王アルフレート・クルップの名前を冠に付けている。でもホール自体には鉄のイメージは全く無く、オペラ座のバルコニー席を連想させる構造の明るい綺麗なところである。

日時: 2007年 4月 6日(金) 19:00~22:10
曲目: バッハ :マタイ受難曲 BWV244
独唱: Topi Lehtipuu (Evangelist), Andreas Wolf (Christus), Letizia Scherrer (Soprano),
Marianne Beate Kielland (Mezzo Soprano), Maximilian Schmitt(Tenor) Thomas E. Bauer (Bass)
合唱:RIAS Kammerchor
指揮:Hans-Christoph Rademann
演奏:ベルリン古楽アカデミー(Akademie für Alte Musik Berlin)
場所:Philharmonie Essen

マタイ受難曲には大きく分けてオーケストラによる大規模のものと、オリジナルの教会での演奏用の小規模のものとがある。今日のベルリン古楽アカデミーは後者のもので、フルートも木製でオーボエやファゴットも昔ながらの楽器を使っている。
こうした昔ながらの響きを耳にすると、バッハという人は今から250年以上も前によくもこれだけ完成された音楽を創り出したものだと改めて感心させられる。演奏時間が3時間にも及ぶにもかかわらず、多彩な美しいメロディを持つ曲が次々と繰り出されて飽きることは無い。アリアやコラールのメロディーで、天にも昇るような気持ちにさせられるというのは本当に心地良い。

ヴィオラ・ダ・ガンバやオーボエ・ダ・カッチャといった珍しい楽器も楽しむことができ、年中行事の「イースターのマタイ」を今年も欠かすことなく聴くことができて満足のオラニエ公であった。


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March 04, 2007

「オーケストラの職人たち」岩城宏之著

岩城宏之といえば日本を代表する指揮者として欧米でも有名なマエストロ。NHK交響楽団の終身正指揮者という肩書きを持ち、04年と05年の大晦日にはベートーヴェンの交響曲全9曲を一人で振り抜いて更に有名になった。残念ながら一昨年亡くなられたが、そんな人が「週刊金曜日」というちょっと政治色ありげで怪しげな雑誌に連載していたエッセイ集(文春文庫)である。原題は「裏方のおけいこ」。全く政治の色は無く、マエストロ自身の純粋な好奇心からの取材で得られた、オーケストラの裏方で活躍する諸専門家の紹介である。

・楽器運搬業者(ハープ、ピアノ)
・調律師
・写譜師
・オーケストラ随行医師
・コンサート・ビラ配布業者

こんな裏方さんたちが登場するのだが、著者自身が直接取材に回っているのがポイント。取材に来られた方もさぞかしビックリしたことだろうが、この旺盛な好奇心と現場主義が、常に新しい芸術を生み出し続ける原動力なのだろう。

例えば「田中陸運」という街の小さな運送業者は、戦後間もなく高名なドイツ人ハープ奏者が偶々近くに住んでいて、その楽器運搬をよく頼まれていた。それを契機に様々な楽器運搬のノウハウを蓄えて、現在は日本フィルハーモニー専属の業者兼スタッフになっている。当時は屋根も無いオート三輪でハープを直接クッションの上に載せて運んでいたというから、今からは隔世の感がある。著者は取材のためこの運送会社で一日アルバイトとして働き、知り合いを含む何軒ものお客様を回ったという。

普段コンサート会場で何気なく貰っているコンサート・チラシの束も、実はある会社が配布代行業ビジネスとして始めたという。一回に100枚以上のチラシを束ねてビニール袋に入れて会場で配るという一見単純そうなことでも、機械化された袋詰めの作業や会場であまり音を立てないように開発されたビニール袋、あるいはチラシを配布するタイミングと場所などかなりのノウハウが詰まっている。終演後にはホール内に捨てられたチラシをしっかりと回収するそうである。しかもこのビジネスは関東のみだというのが面白い。関西や名古屋では他のホールの宣伝になるということでコンサート会場が配布を許可しないそうである。

このような興味深いネタは、NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介できそうだ。この本では、実際にこの裏方さんたちに最大限お世話になっている大指揮者自ら本音で綴っていることが、益々臨場感というかリアルさを加えていて興味深い。「こんなこと言っても良いの?」という感じの話もあり、クラシック・ファンには読んでおいて損はない本である。

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February 24, 2007

ネーデルランド・オペラの「タンホイザー」

今日はネーデルランド・オペラの「タンホイザー」をアムステルダムのミュージックシアター(Het Muziktheater)に見に行く。オランダでオペラを見るのはこれが初めてだが、ほぼ100%ネクタイ着用のドイツに比べて結構ラフな格好の観客も多く3階建てのホールは超満員だ。

「タンホイザー」は全3幕3時間30分もの大作なので、通常より早く18:30に開演。この前聞いた「トリスタンとイゾルデ」が少人数による対話中心の作品なのに対し、こちらは大合唱団が活躍する華々しいオペラ。聞いたことのある有名なメロディーも随所に現れるので、その意味ではとっつき易く楽しむことができる。午前中のゴルフ・ラウンドの疲れもなんのその、オラニエ公もほぼ全曲気を失うことなく観劇できた。

演出上面白かったのは第二幕。有名な歌合戦の場では、中世の吟遊詩人たちがスタンド・マイクの立つカラオケのステージのようなところに行って、マイクを奪い取っては歌い合うという場面が展開。この演出にはつい先日カラオケ・バーを貸し切っての送別会を楽しんだばかりのオラニエ夫人にはかなり印象的だったもよう。さらにこの歌合戦の観客の紳士淑女達が何故か全員日本のと思しき鎧兜を付けていたのが不思議だ。特に頭にかぶった兜の角がまさにカブトムシのみたいだったので、「なぜ虫の集団?」と思わせるところも一興。

注目のオペラ歌手だが、タンホイザーを演じたのはJohn Keysというアメリカ出身のテナー歌手。どこかで見覚えがあると思ったら、先日見た日本のテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」でべルギー在住の指揮者大野和士が紹介され、ブラッセルのモネ劇場で「トリスタンとイゾルデ」を振った時のトリスタン役に抜擢したその人だった。その大きな体を生かして、他のメンバーからは頭一つ抜け出た間のある熱唱。特に第二幕の歌合戦のヴェーヌスベル クのメロディーを歌うことを抑えられないという場面での演技が印象に残った。これに次ぐのが国王ヘルマン役で、図太く威厳に満ちた歌は安心して聞くことができる。タンホイザーの親友ウォルフラム役は、ヴィーナスから最も遠くにいるような「真面目なお役人」という感じは良かったのだが、体が細身のせいか声量が今ひとつでちょっと残念。

オラニエ公の席は2階席(ここでは1階席)の最後列で、お値段は35ユーロというお手頃価格。特にこの辺りは舞台上方にあるオランダ語字幕パネルが見えないので安くなっているらしいが、舞台は良く見えたしパネルは見ても分からないので問題なし。次に行く機会があったらまたこの辺りが狙い目かもしれない。

終演は11時近くになったが、最後もまたひとしきり有名な「巡礼の合唱」のテーマで盛り上がって終幕。やはり「タンホイザー」は何回見ても楽しめる演目だ。家に帰ったらもう一度DVDでおさらいをしよう。


日時: 2007年 2月 24日(土) 18:30~22:45
演目: ワーグナー :楽劇「タンホイザー(タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦)」
主な配役: タンホイザー:John Keyes、ウォルフラム: Roman Trekel 、
領主へルマン: Kristinn Sigmundsson、エリザベート:Ricarda Merbeth
演奏: ネーデルランド・フィルハーモニー管弦楽団
合唱: ネーデルランド・オペラ合唱団

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February 21, 2007

復活目指すサンクトペテルブルク・フィル

サンクトペテルブルク・フィルといえばあの巨匠ムラヴィンスキーが君臨した旧ソ連最高峰のオーケストラ、レニングラード・フィルの末裔というかそのものに当たる。ところがソ連崩壊後の混乱のため人材が流出したせいか、最近ではあまり聞かなくなっていた。今回のオランダ公演旅行もアムステルダムのコンセルトヘボウには来られず、オラニエ公はユトレヒトのVredenburgというホールまで出掛けていった。

以前もここで旧ソ連の巨匠ウラディミール・フェドセーエフ(指揮者)の健在ぶりを聞けたことがあったが、果たして今日はどうだろうと期待が一杯。最初の曲はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番。驚いたことにソリストは中国か韓国系と思しきアジア人のまだ若い女の子。黒をベースにしたドレス姿が素敵なんて気になっていたが、演奏の方も若さ溢れるタッチで弾きまくりという感じ。第一楽章が終わった時点でその演奏ぶりに拍手が起こったくらいだ。ところがオケの方が全然乗ってこない。主旋律になるはずのトロンボーンやホルンが平気で落ちたりするし、全体にサウンドが響かずにピアノばかりが浮き上がってくる。「おい、もっとしっかり吹けよ。」なんて思っているうちにフィナーレで、オケは少しは響くようになったが、コーダでピアノとの呼吸が合わずに終了。若手女流ピアニストのメリハリのきいた流れるようなタッチにオケが救われた第一部という感じ。後で分かったのだが、彼女は日本でも最近公演を開いている今売り出し中の中国人ピアニスト(王羽佳)だった。

かつての栄光に輝くサンクトペテルブルク・フィルもここまでかと思いきや、第二部に入って状況は一転する。あまり馴染みの無いラフマニノフの交響曲で、オーケストラの編成も第一バイオリン16本をはじめとするステージから溢れんばかりの大編成。粗くて洗練されていない演奏になるかと心配したが、これが意外とテミルカーノフの指揮のもとバランスの取れた響きを奏でた。特にオラニエ公には堪らないロシアの美しいメロディを歌う第三楽章、更には一転して抑え切れない情熱がほとばしるようなフィナーレの対比が心に残った。ロシアの伝統か管楽器(特に金管)の粗さに比べて、流れるようにメロディーを繰り出す弦楽器の充実振りが感じられた。

ムラヴィンスキーの死去でこのオケをテミルカーノフが受け継いだのがソ連崩壊直前の1988年。それから20年弱の間色々と辛いこともあっただろうが、まだまだ頑張ればかつての栄光に少しでも近づけるのではないか、そんな思いを抱かせるコンサートだった。

日時: 2007年 2月 21日(水) 20:15~22:15
曲目: チャイコフスキー : ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23*
ラフマニノフ : 交響曲第2番 ホ短調 Op.27
ピアノ: 王羽佳 (Yuja Wang = ユジャ・ワン)*
指揮:ユーリ・テミルカーノフ(Yuri Temirkanov)
演奏: サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団
会場: Vredenburg (ユトレヒト)

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February 19, 2007

秘曲発見!「チェコ組曲」

最近気に入っている曲にドヴォルザークの「チェコ組曲」というものがある。これはドヴォルザークの出世作と言われている割には日本ではほとんど無名で、昨年末にヒットしたドラマ「のだめカンタービレ」の冒頭のプラハでの回想シーンのバックに流れてから知られるようになった。今までいかにマイナーだったかというと、例えば国内版として販売されていたCDはほぼ1種類のみ(NAXOSレーベルの廉価版)。また国内のアマチュア・オーケストラのDBで調べても、過去10年以上数千回の演奏会で取り上げられたのがわずかに2度という有様。今まで曲の存在すら知らなかった。

オラニエ公は先日出掛けたフランス北部の都市リールの大型CD店(FNAC)で、ドヴォルザークの他の管弦楽曲とセットになった2枚組をゲット。演奏も少々粗いが素朴なチェコ・フィルハーモニーの演奏だ。「チェコ組曲」は全部で5曲で、「のだめ」では第2曲(ポルカ)とフィナーレ(フリアント)が採用されている。この2曲は民族舞曲をベースに、ボヘミアの厳しい自然とそこに暮らす人々の素朴な生活を歌った素敵なメロディーに溢れている。それにしても「のだめ」のプロデューサーというか音楽担当者はさすがだ。数限りない曲の中からこの「秘曲」とも言うべき飛び切りのスグレモノを見つけたのだから...。

ドヴォルザークという作曲家は第7番、第8番、第9番「新世界より」と、交響曲ではかなり名を知られている。ところがいくつもオペラを書いているのにほとんど上演されていない。管弦楽曲もスラヴ舞曲と2-3の小品はよく知られているが、オペラと同様に幾つもある交響詩は残念ながら無名だ。買ってきたCDには「チェコ組曲」ならぬ「アメリカ組曲(全5曲)」(これも無名)というのも収録されている。「秘曲」は思わぬところから現れるので、ロシア・東欧モノ好きのオラニエ公としてはこのCDだけでなく、今後もコンサートやTVをウォッチして行きたい。

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February 17, 2007

「モーツアルト99の謎」

去年はモーツアルトの生誕250年で、この手の本がそれこそ雨後のタケノコ状態で本屋に次々平積みにされていたような気がする。このような本は初心者向けということで、明らかな間違いを平気で書いている場合も見受けられるが、この文庫本(近藤昭二著:二見文庫)は99もの「謎」というか「トピック」を連ねるているだけあって、かなり専門的だ。

本の内容で面白かったのはモーツアルトの「推定年収」である。彼は「天才だったが経済的には不遇で早世」というイメージがあるが、実は経済的にはかなりの収入があったようである。特に故郷ザルツブルクを捨ててウィーンに出て来た当初の頃はかなりの売れっ子で、作曲だけでなく貴族の館でのコンサートやピアノの家庭教師など、史上初の「自由音楽家」として多忙を極めていた。

・貴族や富裕な商人の子女へのレッスン代 : 約400万円以上/年
・貴族の館での演奏会: 1回最低約680万円(経費込み)x3-6回/年
・作曲料 : 1オペラにつき約300万円 (例:「フィガロの結婚」)
・宮廷作曲家としての報酬 (1787年以降) : 約500万円以上/年

そこで推定される収入を現在の価値に直すとこんな感じで、推定年収は約1,300万円から4,000万円の間にもなるという。今の会社で言えば上級マネージメントから取締役~社長級である。それでは何故晩年にあれほど貧困に苦しんだのだろうか。死んだ時の借金が約2,000万円相当もあったという。妻コンスタンツェの浪費説などもあるが、この本ではモーツアルト本人の「ギャンブル好き」が原因ではないかと指摘している。下手なビリヤードやカードゲーム等でスッてしまったのだという。あの映画「アマデウス」で夜な夜な大ハシャギする姿を見ると、確かに想像はつく。作曲には天才ということは、それ以外は本当に疎いというかルーズということは十分にあり得る。でも彼の音楽がこれだけ万人に受け入れられていることを思うと、人格的にはきっと愛すべき存在だったに違いない。

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January 28, 2007

伝説のカンタービレ

今や日本のみならず、世界に散らばる日本人もハマっていると思われる「のだめカンタービレ」。ドラマは昨年のうちに終わっているのだが、我が家でもまだまだホットである。例えばオラニエ夫人は毎日のようにブラームスの交響曲第1番(通称:ブラ1)を聞きながら家事をしているし、最近買ったYo-Yo-MaのCDのドヴォルザークのスラブ曲ホ短調、「これって『のだめ』でよく流れていた曲だね...」みたいなパターンが多い。

そこで改めて「のだめ」でメジャーになった曲のCDを見てみると、実は我が家にはその伝説的な名演奏があることに気がついた。まずは「のだめ」のテーマ曲ベートーヴェンの交響曲第7番(ベト7)では、カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団の1982年のライブ録音を入手。これは巨匠カール・ベームの追悼演奏会という特殊な場での演奏ということもあってか、かなり躍動的で飛んだ演奏を聞くことができる。途中でオケが乱れることもあるが、それでもフィナーレに向けて突き進んで行くスピード感とパワーは凄い。

これについては「しんいちろう様」のブログにも書かれているのでご参照ください。このCDのものではありませんが、クライバーが指揮するライブ映像も見られます。

一方「ブラ1」はキリル・コンドラシン指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団による1980年のこれもまたライブ盤である。クライバーの「ベト7」程一般的な評価は高くないが、ロシア東欧モノ好きのオラニエ公としては、西側に亡命した旧ソ連の大指揮者コンドラシンと、今の地元アムステルダムの名門オケというカップリングが堪らない。彼は亡命後わずか3年で惜しまれつつ不帰の人となったが、この録音はその死の1年ほど前の公演である。旧ソ連のオケに共通した中低音金管がうなるようであり、それでいて西欧風の上品さも保っている名演である。フォルテの迫力は満点だがそれでいてフィナーレの歌うような主題はとても優雅で美しい、そういうメリハリのある演奏だ。

偶然かこの2枚とも約25年前のライブ録音であり、クライバーやコンドラシンも今や往年の巨匠に位置付けられつつある。更に一昔前のトスカニーニやフルトヴェングラーの演奏もそうだったが、特に「ライブ録音」は観客がいる臨場感から余計その時代背景や緊張感が伝わってくる。しかもそのオケと指揮者の組み合わせは一度きりだったり、戦争や追悼公演というような特殊な事情があったりして、そこから「伝説の名演奏」が生まれるのだろう。これからもこうした名演のCDを聞いたり、あるいはまさにその場で聞きたいものである。


参考までに紹介したCDの詳細を書いておきます。

ORFEO : C 700 051 B (オーストリア製:購入価格18.90Euro)
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op.92
カルロス・クライバー指揮 バイエルン国立管弦楽団 1982年 5月3日ライブ

フィリップス : PHCP-9242 (日本製:1,450円=現在品切れ中)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68, 1980年 2月29日ライブ
メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 Op.90 「イタリア」, 1979年 11月17日ライブ
キリル・コンドラシン指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

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December 28, 2006

ベートーヴェンの「第九」演奏会

日本の年末の風物詩とも言うべき「第九」の演奏会。今年は折角日本にいるので「第九」を聴きたいと思いチケットを探したが、毎日どこかで演奏会が開かれているのにほとんどが完売。辛うじて手に入れることが出来た東京シティ・フィルによる「第九特別演奏会」に行くことにした。

「特別演奏会」と銘打っているだけあって、演目も「第九」のみでS席8,000円という強気の価格設定。オラニエ公はB席4,000円のチケットを握り締めて会場の東京文化会館に到着すると、会場前から行列が出来ている。待ち時間に売店を覗くと、鍵盤の模様のついた「のだめ(もどき)バッグ」が売られていた。ここにも「のだめ効果」あり。

会場に入ると意外と空席が目立ち、特にS席と思しきエリアは半分位の入りで場所によってはかなり空いてしまっている。これは演奏するほうから見ると気分が乗らないだろなあと思っているうちに合唱隊が入場。左右から一列づつ緊張した面持ちで並んでいく様子をみるとアマチュアの合唱団なのだろう。

指揮者の飯守泰次郎さんは見覚えと言うか名前に聞き覚えがあった。後で分かったのだがオランダのエンスヘデ市立音楽院オーケストラの顧問をされている方で、ヨーロッパでも名を知られているらしい。そして演奏が始まったが、残念なことに指揮者が踊るほどにオーケストラが鳴らない。東京シティ・フィルと言えば一応東京のプロ・オケなのである程度きっちりとした演奏を期待していたのだが、編成人数が少ないせいか厚みのあるサウンドが出ない。頭出しとかはヨーロッパのオケ以上に合っていることは確かなのだが....。昔ブラスバンドで「綺麗な音よりもまず大きな音を出せるようにしなさい。」と繰り返し指導を受けたことを思い出した。終楽章で独唱&合唱が入って盛り上がって良かったという感じだ。

うーむ、音楽会はやはりヨーロッパで聞いた方が良いのかな。4,000円~8,000円と言えば大体ヨーロッパの普通の演奏会のチケット相場に近い。同じ金額を出してコンセルヘボウ管弦楽団やロッテルダム・フィルを聞きに行ける今の環境が、とても恵まれたものであることを再認識した。


日時: 2006年 12月 28日(木) 19:30~21:00
曲目: ベートーヴェン : 交響曲第9番 ニ短調 Op.125 「合唱付き」
ソプラノ:大岩千穂 アルト:小山由美 テノール:小貫岩夫 バリトン:久保和範
指揮:飯守泰次郎
演奏: ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
合唱:東京シティ・フィル・コーア/混声合唱団 明響
場所:東京文化会館大ホール

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December 25, 2006

映画「敬愛なるベートーヴェン」

オラニエ公は年末年始の一時帰国で日本に滞在中である。自由な時間が取れそうなので久しぶりに映画を愉しむことにした。オランダの映画館では「英語セリフ&オランダ語字幕」のため、肝心なところがよく分からずフラストが溜まってしまう。面白そうな映画を探していたところ表題作を発見。年末の「第九シーズン」に合わせて公開というところだろう。

「孤高の天才音楽家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンと、彼のコピスト(写譜師)となった作曲家志望の女性アンナの師弟愛を描いた感動ドラマ。魂で結ばれたベートーヴェンとアンナの複雑な師弟愛と、迫力の“第九”シーンに注目したい。」という宣伝文句に引かれて新宿の映画館に足を運ぶ。

まず髪を振り乱した肖像画でのイメージしかないベートーヴェンの実像に触れるという意味で面白い。芸術家らしく気難しい気性、甥カールへの溺愛、コピスト(写譜師)を使う作曲の過程などをリアルに感じ取ることが出来る。そして「迫力の“第九”シーン」になるが、これは師弟関係を強める前半のヤマというところ。実は後半の弦楽四重奏曲「大フーガ」作曲の過程の方がこの映画の本題であろう。「Copying Beethoven」という原題が示す通り、アンナは作曲家志望だが楽聖ベートーヴェンのコピー以上にはなれない。「合唱つきの交響曲」を初めとする時代を先取りする創作は、神からの啓示を受けたごく一部の人間以外には不可能であるということ、この辺りの考えは「アマデウス」とダブって見える。邦題はより原題に忠実にした方が分かり易いのではと思った。

またこの映画を「フィクション」として考えれば別だが、実在の人物伝という点から考えるとどうも納得がいかないところが多い。難聴のベートーヴェンは「第九」を書く頃には筆談でしかコミュニケーションできなかったはずだが、映画では巨大な金属製の補聴器を付けて会話をしている。「補聴器を色々試したが、実際にはあまり役に立たなかった。」とウィーンの博物館ででは展示されていた。また「第九」の初演は彼ともう一人の指揮者が並んで指揮をしたと言われているが、映画ではアンナの助けを受けた彼だけが指揮台にいる。そもそも「大フーガ」って聴いたことも無いが、時代のトピックとなるような重要な曲だったのだろうか?

残念ながらこうした違和感は唐突とも思える字幕解説(「大フーガ」の後世への多大な影響とベートーヴェンの死)によるエンディングで更に強まってしまった。前半のヤマ「第九」を超えることは、映画監督がいくら頑張って盛り上げてもやはり「大フーガ」には荷が重かったのだろう。クレジットが終わるまで誰も席を立たなかったのは、みんな「あれ、これで終わりなの?」という感覚を共有していたからではないか。

結局オランダの映画館でのフラストと同じように、何となく中途半端な感覚で映画館を後にした。まあクラシック音楽を題材にした映画と言う意味ではそれなりに楽しめたし、本物の「第九」のコンサートには数日後に行くことにしているので、今日のところはこれで良しとしよう。

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December 10, 2006

ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」

エッセンのクリスマス・マルクトを後にして向かったのが、著名なフィンランドの建築家の名前を取ったアールト劇場(Aalto Muziktheater)。1988年オープンの近代的な建物で、白色を基調にしたロビーも広くて感じが良い。来ている人たちもクリスマスシーズンも重なってかおしゃれな感じで皆三々五々集ってシャンパンなどを片手に楽しそうに談話している。大人の社交界という感じの雰囲気がこれからの演奏会を盛り上げてくれる。

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<アールト劇場>


この楽劇「トリスタンとイゾルデ」はワーグナーの大作で、3幕合わせた演奏時間は3時間45分。公演開始が18:00で、2回の休憩を挟むと終了は23:00という長丁場である。有名な「前奏曲と愛の死」以外は全く聞いたことが無いので、ネットであらすじを一通り勉強し、プリントアウト片手にやって来た。舞台上方の大きな字幕板にはドイツ語が表示され、満員の聴衆で歌詞を理解できないのは我々2人だけ(?)という厳しい状況にもめげず、音楽そのものに集中しなくては。

前奏曲が始まって気がついたのが、オーケストラのレベルが高いということ。オペラ座の管弦楽団というとどうも今ひとつというイメージがあったが、ここはエッセン・フィルハーモニーという独立オケがピットに入っている。指揮者兼劇場の音楽監督を長年務めているゾルティシュはピットに登場する度に大きな喝采で歓迎されていたので、この街の名士と言ったところだろう。若干管楽器にばらつきはあるものの官能的なメロディーを歌うように次々と奏でて行く。

演出で面白かったのは、ほぼ三幕とも約3mを一辺としたキューブ型の部屋の一室を模したセット内のみで劇が展開したこと。大掛かりな仕掛けはない。第二幕ではこのキューブそのものが何回転もするという大胆なセットの動きにはビックリした。最初の「天井」が「向かって右の壁」、更には「床」、「左の壁」になってまた「天井」という具合にゆっくりと回るのだその動きにあわせて主役の二人も歌いながら移動していく。ストーリーとしては二人の道ならぬ愛とその先に待ち受ける必然としての死を描いているので、そのめくるめく愛のある意味倒錯した世界を表現したかったのだろう。

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<回転する舞台(劇場のHPより引用)>


それにしてもこの楽劇は長い。登場人物が少なく「タンホイザー」のような合唱の場面もない。とりわけトリスタン役の人は第二幕以降はほぼずっと歌いっぱなしでテノール歌手泣かせと言われるだけあって大変そうだ。第三幕では瀕死の重傷を負った割に元気なトリスタン。最後はパンツ一丁になって息絶えるまでの熱唱と熱演に拍手。音楽では「前奏曲と愛の死」に集約された幾つかのテーマが、全体の流れの中でキーのモティーフとして美しく場を盛り上げていく。その行き着くところが最後のイゾルデによる「愛の死」の歌。本当に綺麗でトリスタンの亡き骸に寄り添って亡くなるエンディングには思わず涙が...。さすがに二幕の後半と三幕の前半では見る方として少し集中を欠いてしまったが、3時間45分を長くは感じさせない濃い演目を楽しむことが出来た。

日時: 2006年 12月9日(土) 18:00~22:55
演目: ワーグナー: 楽劇「トリスタンとイゾルデ」 (1865年初演)
主な配役: イゾルデ:Evelyn Herlitzius、トリスタン: Jeffrey Dowd
指揮: Stefan Soltesz
演奏: Essener Philharmoniker
(詳細は こちらのHPを参照のこと。ページ右の"Szenefotos"に舞台の写真もあり。)

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